診療方針

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小児泌尿器科疾患

こどもの泌尿器疾患は生まれつきのもの(先天性)が多く、最近では胎児エコー等で出生前に診断されることもあります。小児では大人とは違う検査や治療が必要になるため、当科では専門外来を設けており、当院の小児科と連携して診療にあたっています。

当科では以下のような小児泌尿器疾患を主に診療しています。

1:水腎症

腎臓で作られた尿は尿管、膀胱および尿道といった経路(尿路)通って体外に排出されますが、その尿路の通過障害により、腎臓が腫れた状態を水腎症といいます。狭くなる部位は様々ですが、腎臓から尿管に移行する部位(腎盂尿管移行部)や、尿管から膀胱に移行する部位(尿管膀胱移行部)、また、男の子では膀胱から先の尿道に狭い部分があり(後部尿道弁)、尿がうまく出せないために水腎症になることもあります。腹痛や嘔吐、尿路感染症による発熱などの症状でみつかる場合もありますが、最近では胎児のエコー検査で発見されることが多くなっています。
症状がなく腎臓の働きが悪くならずに、自然に改善することも多いため、定期的なエコー検査などで様子を見ることが多いですが、水腎症の改善がない場合は手術が必要となります。手術は狭くなっている部分を切除してつなぎ直す方法があります。

2:膀胱尿管逆流症

膀胱にたまった尿が尿管から腎臓に逆流する状態です。ほとんどの場合は生後すぐからの繰り返す尿路感染症を契機に診断され、こどもの尿路感染症の30~50%に逆流がみられます。感染を繰り返す場合や逆流の程度が強い場合は、腎臓の働きが悪くなることもあります。
逆流の診断には膀胱内に造影剤という薬を入れ、レントゲンで逆流を確認する検査が必要です。診断がつくと、抗菌薬を予防的に内服することによって尿路感染症をコントロールし、腎機能を保護しながら経過観察をします。また、便秘やおとこの子の場合の包茎も要因となるため、同時に治療を行います。経過観察をする中で自然軽快することもありますが、治療中にも尿路感染症をおこすような場合は、逆流を防止する手術が必要となります。

3:停留精巣

精巣は胎児期にお腹の中で発生し、鼠径管というトンネルを通って陰嚢内に降りてきます。精巣が陰嚢内に降りずに、鼠径部や腹腔内にとどまっている状態を停留精巣、精巣がときどき陰嚢外に挙上する状態を移動精巣と呼びます。健診などで発見されることが大半です。
停留精巣の場合は、将来的に不妊や悪性腫瘍の発生の確率が高くなるため、1?2歳までに手術で陰嚢内に精巣を固定する必要があります。移動精巣の場合は、すぐに治療を行う必要はありませんが、経時的に挙上が強くなることもあるため、経過観察は必要です。

4:包茎

陰茎先端の亀頭部が包皮で被われており露出していない状態です。生まれたばかりの男の子はこの状態が正常であり、成長とともに包皮と亀頭が徐々にはがれていきます。平均して4~5歳頃から亀頭が露出するようになりますが、もう少し時間がかかる場合もあります。
特に症状がなければ治療の必要はありませんが、包皮が赤くはれて痛みがでる亀頭包皮炎や、尿がスムーズに出ずに包皮が膨らむ状態の場合には治療が必要です。
大部分は毎日、包皮の翻転を繰り返すことや、ステロイド軟膏の塗布で改善するため、小児期に包皮を切除する手術は積極的には行っていません。

5:夜尿症(おねしょ)

5歳以降におねしょが持続する場合を夜尿症といいます。夜尿症がみられる頻度は夜尿症が見られる頻度は、5歳で15%、10歳で5%、12?14歳で2?3%、15歳以上で1?2%で、思春期までには1年間に約14%ずつ自然軽快していくとされています。
夜尿症の原因には睡眠中に起きられない、尿量を少なくするホルモンの夜間分泌が足りない、膀胱容量が小さいといった原因が考えられていますが、夜尿症の約5%には原因となる疾患がみつかることがあります。
治療としては夕方以降の水分や塩分を控える、膀胱になるべく尿をためる練習をするなどの生活習慣の改善を基本としています。さらに夜尿症の状態に合わせてホルモン剤や抗コリン薬(膀胱容量を増やす)といった薬を使用する場合もあります。 その他、様々なこどもの泌尿器疾患に対応しています。こどもの尿や性器について気になることがあれば、お近くの小児科から紹介していただくか、当院の小児泌尿器科外来にご相談ください。